エミちゃんとアユムくん、喧嘩する


 

シチュエーション2:

大学でランチをしているときに友だちが噂話をし始めました。

 

 

 

「ねえねえアユム、あの先輩の噂知ってるー?」

「どの先輩ですか?」

「なんだっけ、なんか女の子みたいな名前なんだけど男の先輩でね、確か、コ……コウノ……?」

「あっ、それもしかしてエミちゃんさんのことですか?」

「あーっそうそう! コウノエミ! え、ていうか知り合い?」

「いえ、見たことも会ったこともありません」

「そうなの? まあいいや、…あ、よくないか。もしもそのひとと関わりそうになったらさ、全力で逃げた方がいいよ!」

「なんでですか?」

「下半身がものすごいろくでなしらしいから!」

「………は?」

「なんか聞いたところよると、すでにうちの大学の女子3分の1は食われたとかなんとか…」

「えええ多すぎじゃないですか?!」

「そんな噂があるくらいいろんなとこに手出してるってことよ! アユムなんて特に何にも知らなそうなんだから、もし会っても騙されないようにしなよね!」

「………」

 

 

 

 

「──という話を聞いたんですが」

「へえー。あ、アユムくんそこの醤油取って」

「あ、はい…じゃなくて! 返事『へえー』だけなんですか?!」

「え? うーん、じゃあ俺は目玉焼きには醤油派かな!(キリッ)」

「いやそっちじゃなく!」

「ちなみに半熟が好きでーす」

「目玉焼きは堅焼きが王道なので半熟は断固として認めません!」

「お金…」

「次からは半熟にします!」

「うわあーいやったあー」

「…ってだからそうではなくてですねえ!」

「安心していーよお、俺別にアユムくんをどうこうするつもりないからさあ」

「友達は騙されては駄目だと言ってました!」

「ひどいなあ、俺より友達信用するの?」

「はい」

「即答かあ…」

「何か不自然だとは思っていたんです! 勝手にうちに侵入するわご飯は頂いてくわお金は気前よく払ってくれるわ、そうやって葛木を懐柔しようとしていたわけですね?!」

「ちょっと待ってアユムくん」

「なんでしょう」

「ひとつ言わせてもらいたいんだけどお」

「はい」

「俺にだって……選択の自由はあるはずだ!」

「………はい?」

「確かに俺は女の子が好きだよ? 飲み会のついでによろしくやっちゃうことも多々あるよ? 相手の顔なんて逐一覚えてなかったりもするよ?」

「最低の極みですね。このろくでなしが!」

「でもだからってアユムくんにも手ぇ出すかって言ったらそれはさあ、俺にも選ぶ自由はあるんだしさあ」

「………エミちゃんさん」

「うん?」

「それはもしかして、葛木に女性としての魅力が欠落してると言いたいわけですか?」

「いや、ていうかむしろお母さん?みたいな?」

「………」

「(もぐもぐ)」

「………これは……果たして怒るべきところでしょうか。それとも貞操が守られたと喜ぶべきですか?」

「喜ぶべきだよ!」

「んなわけあるかあああああ!ですよ!」

「ああーっ俺の目玉焼きが奪われたー!」

「せいぜいソースにまみれた目玉焼きでも食べて咽び泣いてしまえですよ! モテない人間の気持ちがわからないリア充は爆発してしまええええ!ですよおおおお!」

「なんだか語尾が無理くりになってきてるよアユムくーん!」

 

 

 

 

20200630再掲