設定とあらすじ


 

《あらすじ》

 

 あるところに、ホンダトーヤという男の子がいました。

 トーヤは、11歳の誕生日に突如として異世界コメディアに召喚され、なんやかんやでその世界を救った経験があるという、人よりちょっとめずらしい、けれどもまあどこにでもいる至って普通の高校一年生です。

 しかし、そのときの記憶があまりに鮮烈すぎたからでしょうか。トーヤはいま自分が住んでいる世界にどこか違和感を覚えて仕方がありませんでした。自分の居場所はここではない、という拭い去れない据わりの悪さが、あの冒険から帰ってきて以来ずっとつきまとっていたのです。

 周囲とも馴染めず、友だちも出来ず、トーヤは独りでした。

 

 『かえりたい』。

 

 あまりに子供で、我が儘で、甘ったれだった自分を、呆れながらも叱り、愛し、守ってくれた仲間たちにもう一度会いたい。自分が生きるべきなのは、あの世界なのだと。

 そう願った16歳の誕生日、トーヤはなんと、人生二度目の異世界トリップを経験することになったのです。

 

 しかし、再びコメディアに戻ってきたトーヤを待っていたのは、想像していたような歓待ではありませんでした。

 親友のロイは言います。「元の世界に帰るんだ、トーヤ。お前の居場所は、もうここにはない」。

 自称トーヤの師である、キースは言います。「何のために戻ってきた? 元の世界では思うようにいかなかったか。それで慰めでもねだりに来たか。5年も経ってそういう甘ったれな所は全く変わらんな、愚図め」

 そして、初恋の相手であり、幼いながらも結婚の約束をしていたエルレインは。「―――お会いするのは二度目だね、トーヤ。僕はアルノルト・レフ・パラディーゾ。プルガトリウムの第三王子で――今は、エルレインの夫です」

 

 かつての仲間たちは、トーヤが戻ってきたことを喜んではくれませんでした。

 かつて大好きだった女の子は、知らない内に結婚し、あの淡くも大切な約束を破っていました。

 トーヤは、絶望します。現実を受け止めきれずに、感情のまま仲間たちの元から飛び出して行きます。

 そしてトーヤは失意の中で、五年前をめぐる旅をすることに決めるのです。自分が再びコメディアに戻ってきた意味を知るために。自分の居場所はここだと、信じるために。

 

 しかし、そのときのトーヤは想像もしていませんでした。

 よもやその旅の道中で、五年前のように世界を巻き込む事件に遭遇し、再び救世主として立ち上がることになろうなどとは―――。

 

 

 

《主な登場人物》

 

本多 籐也

 11歳→16歳。通称、トーヤ。五年前突如として異世界コメディアに召喚され、11歳にして世界を救った救世主。しかしながら今も昔も大体クソガキ。

 

ロイ・ダインフォード

 17歳→22歳。パラディーゾ王国騎士団団長の息子で、現在は第五師団副師団長を務める。むっつり堅物。トーヤとは6歳差を越えた親友。

 

エルレイン・ミラ・アニュイ・パラディーゾ

 12歳→17歳。パラディーゾ王国第一王女にして次代女王。トーヤの初恋の相手だったが、一年前にプルガトリウムの第三王子と政略結婚した。

 

キース・ミングウェイ

 25歳→30歳。失われたと言われていた“魔法”を復活させた、やたら美形な天才考古学者および発明家。尋常じゃなく毒舌。勝手にトーヤを下僕もとい弟子扱いしている。

 

ニーナ・ノルデック

 16歳→21歳。プルガトリウム出身の少女。だいぶ女性らしくなったが根は男勝りで勝ち気な性格。なぜか口喧嘩ばかりのキースに淡い恋心を抱いている。

 

カイクーン・レリエリ

 38歳→43歳。シオウル出身の元傭兵だが、現在はパラディーゾ王国騎士団第七師団師団長を務める。ムキムキアメコミボディな気の良いおっさん。トーヤからのあだ名はなぜか「ショーグン」。

 

ユーイ・ネフェルタリ

 21歳→26歳。世界を股にかける商人ギルド『ネフェルタリ』の一員。彼が綴った五年前の救世主一行の冒険譚は世界的ベストセラーになった。すばらしく強か。

 

ネル

 28歳→33歳。インフェルノの森奥に住まう女戦士の一族『デクナム』のひとり。性格は温厚だが、非常に背が高く怪力。現在は二児の母。

 

ヘルマー・ディットリン

 34歳→39歳。現在はアニュエラ大神殿にて神官長を務める。聖職者のくせに調子に乗りやすく空回りもしやすいが、根はお人好し。図らずもおもしろ担当になりがち。

 

エドアルド・ジン

 29歳→34歳。元『魔憑き』の男。現在は気ままに世界各地を放浪中。どう見ても危険人物なので現状トーヤが関わりたくない相手ランキングぶっちぎり1位。

 

アルノルト・レフ・パラディーゾ

 12歳→17歳。プルガトリウムの第三王子にしてエルレインの夫。婿養子のためパラディーゾの姓を名乗っている。和平の証としての政略結婚だが、夫婦仲は良いらしい。

 

シェムハザ

 新興宗教団体『リア=デ・ヴァイヨン』の導師を名乗る少女。常に仮面をつけている。声や背格好から、年齢はおそらくトーヤと同じか年下くらい。

 

 

 

《重要語彙》

 

異世界コメディア

 五年前トーヤが救った世界。当時は魔物が激増し人間の生活を脅かしていたが、トーヤの働きにより魔物の大部分は消え去った。

 

パラディーゾ聖王国

 大陸西方に位置する、女神アニュエラを奉ずる宗教国家。現国王はエルレインの父、オルトロ・セス・アニュイ・パラディーゾ。王都からほど近くにアニュエラ大神殿がある。

 

プルガトリウム帝国

 数百年前パラディーゾから独立した、大陸東方の軍事国家。幾度となくパラディーゾに侵攻を繰り返し今や国土は五分に迫る。現皇帝はバルタザール・ディ=アニ・プルガトリウム。国教はパラディーゾと大元を同じくするが、自国の正統性を主張するために解釈は異なる。

 

シオウル共和国

 大陸の南方に位置する島国。議会制を取っている。新興宗教が乱立しているがもとは精霊信仰が主体。二大国の仲介役として貿易を行うなど、常に中立を謳う。

 

インフェルノ

 プルガトリウムに隣接した、大陸北方の未開地域。「魔物が生まれる地」とされ、その魔物の多さからプルガトリウムも侵攻を断念したと言われる。一方で、人の手がほぼ入っていないためか、自然豊かで美しい土地でもある。

 

アニュエラ

 パラディーゾとプルガトリウムにおいて創造神として祀られている女神。でも実際は創造神ではない。五年前トーヤを召喚した張本人。

 

魔憑き

 後天的に魔物のような能力と性質を得た人間のこと。発症すると過去の記憶が曖昧となり性格も凶暴化する。発症の原因は不明だが、魔憑きとなった者は必ずその直前に行方不明になっているらしい。五年前アニュエラの慈悲によって世界中の魔憑きから魔が祓われたはずだが……?

 

リア=デ・ヴァイヨン

 最近シオウルで信者を増やしている新興宗教団体。「この世は今や『終末』の到来によってしか救われない」とする終末信仰を掲げる。なぜか救世主であるトーヤを付け狙っている。

 

 

 

 

20200630再掲