アパルトマン『102号室:豊岡 和臣』あとがき


 


 まず、豊岡さんが自身をどういうマイノリティだと認識しているかについては、今後本編で明確に描写することはありません。

 アパルトマンを書きはじめた当初から、ずいぶんいろいろ変わりました。世間の風潮も少しずつ変化してきていますし、昨今ではLGBTフレンドリーを謳う賃貸住宅とかも普通にあるし、もはやこのシリーズ置いとくの恥ずかしいくらいなんですが、だからといってすべてのはみ出し者に寛容なわけではもちろんなく。

 いろんな理由で、ぜったいに言いたくないというひとはいます。豊岡さんに関して言えば抱えるものがナイーブすぎるというのもあるし、書き手であるわたしが適切に描き切れるのかわからないというのもあります。それならキャラクター自体を没にしてしまえばいいのだけれど、それでも描かずにはいられませんでした。

 

 ところで、一人称視点だといろいろわかりづらいよな〜というのは兼ねてから思っていたことなんですが、今回書いていてストーリーテラーであるアイが細けえことを気にしなさ過ぎなのもわかりづらさに拍車かけてんな、ということに気付きました。なので補足を少し。

 序盤、豊岡さんの言葉に端を発したアイの質問と、それに対する豊岡さんの返答が全然噛み合ってないところがあると思いますが、それは単純に豊岡さんがアイの話を聞いていなかったせいです。アイ自身も独り言だったのかな?と考えてるのがまさしくその通りで、豊岡さんは完全に自分の世界にいたので、このあとアイからさっきああ言っていたのはそういうことだったんだね!と言われてマジでビックリしています。なんで僕が考えてたこと分かんの……?エスパー?みたいな。おまえが口に出してたんだよ。

 アイはあまり気にしないタイプなので、質問に対する返答が質問内容と全然違うものであってもとくに突っ込んだりしません。なので読んでくださる方が「?」となり、わたしがここで説明する羽目になります。読み物として致命的だなあ……。