1.ハロルドとエニシア(コーデリア)
ハロエニはのちのち結婚するので紛らわしいのですが、今回のお話の時点では二人にロマンス的な感情はありません。
エニシアにとっては自分を変えてくれた存在なので特別な思いがあったかもしれませんが、ハロルドにとっては「なんか面倒な女」→「一緒に逃げちゃったからもう身内かなあ」にクラスチェンジした程度です。
このあと徐々にエニシアが恋愛感情を抱くようになり、それをハロルドが受け入れるかたちで二人はめでたく結ばれることとなります。 まだまだ先は長い。
ちなみに、中略で済ませた部分でハロルドは「クレイジーじゃねえ」と称した面倒な女に度々会いに行っていますが、これも彼女を気に入ったとかそういうロマンス的な理由ではなく、彼が基本的に「本当に助けを求めている人間は見捨てない」ひとだからです。
だからと言って積極的に助けるつもりはなく、あくまでエニシアが逃げると決めたら力になるつもりでした。逆に言えば、もしも彼女が諦めていたら……。
ハロルドはそういう男です。
2.整形とかできるんだ?
できます。
ただし、彼らが暮らしている国では実施されることはほぼありません。そんな医療技術も設備もないからです。
あの国、人体兵器を製造したりしてものすごいハイテク感出していますが、そういうすごい科学技術を軍事力に全振りした結果、インフラ系があんまり整っていません。テレビは普及しておらずラジオが主体で、携帯電話はあるけど無線みたいなやつ。カーマインが普通にパソコン持ってるのが異常なレベルです。
そんな感じなので、医療のレベルもかなりおざなりで、一般的にお医者さんの仕事は薬を処方するのが主であり、外科手術なんてほぼほぼ行われません。
じゃあなぜエニシアは整形できたのかと言うと、これはガーファンクル先生が他国から亡命してきた医師だからです。
他国はすでに現代日本より若干劣るかな?という程度の医療技術や設備が整っており、そういうところで医療を学び従事していたガーファンクル先生だからこそ整形という手段を思いつき、実行できたわけです。
もちろん、亡命してきたときのツテで、裏ルートから政府の機関で使われるような設備を貰い受けてたせいもあります。技術だけあってもそれを生かす設備がないとね、ってブラックペアンで言ってた。
国内において顔を変えられるという発想がないため、引き続きエニシアはセントラルで生活できることとなりましたが、本来なら地方に逃げた方が明らかに安全だったとは思います。実際に事情を知るガーファンクル先生はそう勧めました。
けれど、整形後の回復を待つ間にイヴァンやヒューイとも親しくなったことや、没落しかけとは言え貴族として暮らしてきた自分がいきなり一人で生きていけるのか不安だったこともあり、エニシア自身の意志でセントラルに残ることを決めました。
「いんじゃね?」
というハロルドの鶴の一声があったことも周囲が反対しきれなかった一因だとかなんとか。
3.イヴァンとかそのへんのこと
イヴァンとヒューイはエニシアの出奔には関わっておらず、なんか最近やけに一人でどっか行くなあと思っていた悪友が、ある日突然お姫様みたいな美少女を連れ帰ってきた!!!という感じでした。
エニシアがどこぞの貴族の令嬢であることは承知していますが、彼女がどのような仕打ちを受けてきたのかまでは知らされていません。大人であり保護者である孤児院の院長先生と、ガーファンクル先生は知っています。
イヴァンは整形前のエニシアに一目惚れし、整形後のエニシアの振る舞いを見て二度目惚れしています。中身までうつくしいなんて!と。
彼は彼でとても一途に想い続けるわけですが、当のエニシアはもちろんイヴァンの気持ちに気付いていました。貴族出身かつ男性経験豊富だから、そういう機微には敏感なのです。
でもイヴァンはエニシアの事情を詳しく知らないのでかなり神聖視しているところがあり、エニシアもそれに勘付いていたため、夢を壊すことに気が引けて彼にはちょっと猫をかぶって接していました。
二人が大切な仲間同士であったのは間違いありませんが、恋愛関係にまで発展しなかったのはそういう事情もあります。まあイヴァンさんなら事実を知ってショックは受けても、変わらず好きだったんじゃないかなと思うけど。
4.イメージソングは『マリオネット』
BOØWYではなくロザリーナです。
誰かの言いなりで抑圧されてきた子が、あるひととの出会いによって世界がぱあっと開けていくのをよろこび歌っているような曲。とても良い。
これを初めて聴いたとき、頭の中にバーッと映像が流れ出し、書かねば!!!と思いました。
エニシアの運命を変えたのは間違いなくハロルドなわけですが、『マリオネット』の「ずっと探し続けてたわたしだけにしか出来ないことが、いま見つかりそうだ(大意)」の歌詞にあたるのはアシェアのことだったりします。
エニシアは長いこと性的に搾取され続けてきており、中絶の経験もあります(火遊びのつもりだった相手方が出産を認めなかったとかそういう事情かと。お父さんは産んでほしかったろうなあ)。なので、自分が今後子どもを産むのはむずかしいかもしれないことはガーファンクル先生から聞かされていました。だからこそ、ハロルドとの間に子どもができたと知ったときは、ほんとうに、心の底からうれしかったと思います。
エニシアにとってアシェアは、ようやく見つけた自分が生まれてきた理由のようなものです。そりゃあもう猫可愛がりです。そんな宝物と出会わせてくれたハロルドありがとう!みたいな、大サビのあたりはそういうテンションかなと想像しています。エニシアがちいさいアシェアを高い高いしながら笑っているのが見える……
それを考えると、大きくなった現在のアシェアが自分の母をよく思っていない(※マイルドに表現しています)ことが、非常に可哀想にも思えますね。
ちなみに、ハロルドがよく笑うようになるのはアシェアが生まれてからです。それまでは飄々としていながらも割と真顔でいることが多く、感情が読みづらいタイプでした。彼にとってもアシェアが生まれたことには大きな意味があったのだと思います。
つまるところ、アシェアは両親に祝福され、愛されて生まれてきた子であり、生まれてきただけで誰かをしあわせにしていたわけですが、それが一体何がどうして今ああなってしまったのやら。
書いたわたしが言うのもなんだけど、人間ってままならないものですね。
20200630再掲